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2005年 11月 25日
同窓会でとなりの席に座ったオクムラは酔っぱらって、そう言った。 は、はい? ぼくはまったく記憶になかったのだが、14の春に期間限定で クラスメイトから“メロン”と呼ばれていた、らしい。 「なんだよ“メロン”って?」 「お前、弁当にマスクメロンをひと切れ持ってきたことがあったろ? それをオレとかチバちゃんが見つけて、ひやかしたんだよ」 「ふーん、それで“メロン”かぁ…。アホだなぁ」 「そう。メロン」 オクムラは、“メロン”の「メ」をやや強調して、ドイツ語っぽく発音した。 ドイツ語っていうか、ヒトラーの演説のような過剰さで「メロン。メロン」と バカみたいに繰り返して言った。 本当に身に覚えがなかったので、果たしてその発音が正しいものなのかは分からない。 でも、中学生のころは学校の教室のなかで行われることが生活のほぼすべてだったから、誰がどんなシャーペンを使っていた、とか アイツのブレザーの襟のところが汚れたままになっていた、とか そういう細部をみんなはっきりと記憶しているんだろう。 ぼくがどんな弁当を食っていたか、を覚えていても不思議ではない。 オクムラが言ってることはきっと正しい。 でも、ぼくは本当に覚えていなかったので、 当時の記憶が色鮮やかに思い出されることも、 ノスタルジックな気持ちにかられることもなく、 他人事のように「あはは」と笑って、気のぬけたビールを流し込んだ。 となりではしゃぐオクムラの薬指にはリングが光っていた。 *** 家に帰ると、母が最近買ったばかりのケータイで マスクメロンを撮影していた。なかなかベストなアングルが決まらないらしく、 メロンを目の前に置いて、離れたり近づいたりしている。 「なんだか、接写してもブレちゃうのよ」と母は言い、 「それ、液晶画面の問題でしょう」とぼくは言った。 法事で貰ってきた、というそのメロンはソフトボールをひと回り大きくしたくらいの見事な球体で、果皮を覆った網目模様はとてもキレイだった。 母は、そのメロンをなんども撫でて、 「おじいちゃんが入院していたときも、こうして頭を撫でてあげたのよ」 と言った。 手に取ると、メロンはずっしりとした重みがあって、たしかに人の頭みたいだった。 台所にメロンをもっていき、包丁を入れる。 なんだか残酷なことをしているような気分になった。 シャクリと真っ二つに割れたメロンは、ぼくの好きな爽やかなみどり色で 甘いにおいが鼻をついた。 数年ぶりに口にしたメロンは、まだ芯が残っていて固かった。
by ganbaru_yozemikun
| 2005-11-25 23:38
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